相続税が発生すると、「誰が税金を支払うのか?」という疑問が生じます。
相続税の納税義務者は、法定相続人を中心に決まりますが、遺言による相続や一定の条件を満たす場合には、法定相続人以外の人も納税義務を負うことがあります。
本記事では、相続税を支払う人の範囲や法定相続人の順位、相続税額の違い、遺言の影響、納税義務が発生するケースとしないケースについて詳しく解説します。
相続税を支払う義務がある人
相続税の納税義務者は、相続や遺贈によって財産を取得した人です。
相続税法では、以下の者に納税義務があると規定されています。
- 相続人(配偶者、子供、親、兄弟姉妹など)
- 遺言によって財産を取得した人(受遺者)
- 相続や遺贈を放棄しなかった人
- みなし相続財産を受け取った人(生命保険金・死亡退職金など)
- 特定の非居住者で、日本国内にある財産を取得した人。
根拠法令
- 相続税法 第1条の3(納税義務者)
法定相続人の範囲と順位
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことです。
相続順位が決められており、被相続人(亡くなった人)の親族が優先的に相続人になります。
相続順位
- 第1順位:子(直系卑属)
- 子がすでに亡くなっている場合は孫が相続。
- 第2順位:親(直系尊属)
- 子がいない場合、父母が相続。
- 第3順位:兄弟姉妹
- 子も親もいない場合に兄弟姉妹が相続。
配偶者は常に相続人になります。
ただし、配偶者のみでは単独相続できず、必ず他の相続人と分ける形になります。
根拠法令
- 民法 第886条~第889条(法定相続人の範囲と順位)
配偶者・子供・兄弟姉妹の相続税の違い
相続税は、相続人の関係性によって控除額や税額が異なります。
配偶者
- 配偶者控除:1億6,000万円または法定相続分のどちらか低い額まで無税。
- 残りの財産に通常の税率が適用。
子供
- 法定相続分に応じた財産を相続し、相続税の累進税率(10%~55%)が適用。
- 未成年の子には一定の控除がある。
兄弟姉妹
- 配偶者や子供よりも控除額が少ない。
- 遺留分(最低限の相続権)がないため、遺言によって相続できない場合もある。
根拠法令
- 相続税法 第19条の2(配偶者控除)
- 相続税法施行令 第6条(税率)
法定相続分と遺言による相続の影響
法定相続分は、民法で定められた相続割合ですが、遺言がある場合は遺言の内容が優先されます。
法定相続分の例
- 配偶者と子供が相続する場合 → 配偶者1/2、子供1/2
- 配偶者と親が相続する場合 → 配偶者2/3、親1/3
- 配偶者と兄弟姉妹が相続する場合 → 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
ただし、法定相続人には「遺留分」があり、遺言によって遺産を受け取れなかった場合でも最低限の財産を請求できる権利があります。
根拠法令
- 民法 第900条(法定相続分)
- 民法 第1028条(遺留分)
納税義務の発生するケースとしないケース
納税義務が発生するケース
- 相続財産の合計が基礎控除額を超えた場合
- 基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数。
- 生命保険金や死亡退職金が非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)を超えた場合。
納税義務が発生しないケース
- 相続財産が基礎控除額以下の場合。
- 配偶者の相続財産が1億6,000万円以下(配偶者控除適用)。
- 相続放棄をした場合(相続放棄をすると最初から相続人ではなかったものとみなされる)。
根拠法令
- 相続税法 第27条(納税義務の免除)
- 相続税法施行令 第6条(基礎控除)
まとめ
- 相続税を支払うのは相続人や受遺者(遺贈を受けた人)
- 法定相続人の範囲は配偶者、子供、親、兄弟姉妹の順番
- 配偶者には特別な控除があり、1億6,000万円までは無税
- 遺言による相続でも相続税は発生するが、遺留分にも注意が必要
- 相続財産が基礎控除額以下なら相続税はかからない
相続税の申告は相続開始後10か月以内に行う必要があります。
早めの準備と、正確な知識が大切です。