遺産分割の方法によって、相続税の負担は大きく変わります。
適切な分割方法を選ぶことで、相続税を軽減し、円滑な相続を実現することが可能です。
本記事では、遺産分割が相続税に与える影響、法定相続分と遺言分割の違い、納税負担を軽くする分割方法、遺産分割協議の注意点について解説します。
遺産分割が相続税に与える影響
遺産分割の方法によって、相続税の計算方法や納税額が変わります。
分割方法が未確定の場合、相続税の計算に影響を与える要因は以下のとおりです。
- 未分割の財産は「法定相続分」で計算される
- 遺産分割が完了するまでは、各相続人が法定相続分どおりに取得したものとして相続税が計算される。
- 特例や控除が適用されない可能性がある
- 小規模宅地等の特例や配偶者控除は、実際に分割が完了していないと適用できない。
- 相続税の申告期限(10か月以内)に影響する
- 遺産分割が完了していない場合、申告時に控除が適用できず、一時的に高額な税額が発生する可能性がある。
根拠法令
- 相続税法 第15条(基礎控除)
- 相続税法 第19条の2(配偶者控除)
法定相続分 vs 遺言による分割
遺産分割の方法には、法定相続分に従う場合と、遺言による分割の場合があります。
どちらの方法を選択するかによって、相続税の負担が異なります。
法定相続分とは?
法定相続分は、民法で定められた相続人の取り分です。
以下の割合に基づいて相続財産が分割されます。
相続人の組み合わせ | 配偶者の取り分 | 子・親・兄弟の取り分 |
---|---|---|
配偶者と子 | 1/2 | 1/2(子で均等) |
配偶者と親 | 2/3 | 1/3(親で均等) |
配偶者と兄弟姉妹 | 3/4 | 1/4(兄弟姉妹で均等) |
法定相続分に従って分割すると、特例や控除を適用しやすくなり、相続税の負担を軽減できる場合があります。
遺言による分割
遺言がある場合、被相続人の意思に基づいて遺産が分割されます。
法定相続分と異なる分け方ができるため、特定の相続人に多く財産を渡したり、争いを防ぐ目的で利用されます。
遺言による分割のメリット
- 相続人間の争いを防げる
- 税負担を考慮した分割が可能(配偶者控除や小規模宅地の特例を活用しやすい)
遺言がある場合でも、遺留分(最低限の取り分)を請求される可能性があるため注意が必要です。
根拠法令
- 民法 第900条(法定相続分)
- 民法 第1028条(遺留分)
納税負担が軽くなる分割方法
適切な遺産分割を行うことで、納税負担を軽減できます。
主な節税対策として、以下の方法が有効です。
配偶者控除を最大限活用
配偶者が相続する財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか低い額までは相続税がかからないため、可能な限り活用すると良い。
根拠法令
- 相続税法 第19条の2(配偶者控除)
小規模宅地等の特例を適用
自宅や事業用不動産を一定の条件で相続する場合、土地の評価額が最大80%減額される。
分割の際、自宅を相続する相続人を決めておくことがポイント。
根拠法令
- 相続税法 第69条(小規模宅地の特例)
生命保険を活用
相続財産の中に生命保険金が含まれる場合、500万円 × 法定相続人の数まで非課税となる。
この制度を利用して、生命保険を活用することで、現金での納税資金を確保しながら税負担を抑えられる。
根拠法令
- 相続税法 第24条(生命保険の非課税枠)
遺産分割協議の注意点
遺産分割協議を進める際には、以下の点に注意する必要があります。
- 全員の合意が必要
- 遺産分割協議は、法定相続人全員の同意がないと成立しない。
- 相続税の申告期限(10か月以内)に分割を確定させる
- 未分割のままだと特例が適用されない場合があるため、早めに協議を進めることが重要。
- 二次相続を考慮した分割を行う
- 配偶者が多くの財産を取得すると、将来の相続(配偶者の死亡時)で相続税が高くなる可能性があるため、子どもとのバランスを考える。
根拠法令
- 相続税法 第27条(申告期限)
- 相続税法施行令 第4条(遺産分割の確定)
まとめ
- 遺産分割の方法によって相続税の負担が変わるため、適切な分割を行うことが重要。
- 法定相続分に従うと、控除や特例を活用しやすいが、遺言を活用することで柔軟な分割が可能。
- 配偶者控除や小規模宅地の特例を活用すると、相続税の負担を軽減できる。
- 遺産分割協議は全員の合意が必要であり、申告期限内に確定させることが求められる。
- 将来の二次相続まで考慮し、最適な分割方法を選ぶことが大切。
遺産分割は相続税の負担に大きく影響するため、慎重に検討し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。