
相続税対策では、一次相続だけでなく、将来発生する二次相続までを見据えた対策が重要です。
一次相続で配偶者に財産を集中させると、一時的には相続税負担を抑えることができますが、二次相続では配偶者控除が使えないため、結果的に税負担が大きくなるリスクがあります。
本記事では、二次相続対策を怠ったことで相続税負担が増加した失敗事例をもとに、一次相続時に検討すべき具体的な対策を解説します。
事例紹介:一次相続で配偶者に全財産を相続させた結果、二次相続で税負担が急増
父が亡くなり、相続人は母と子二人でした。
一次相続では、配偶者控除を最大限活用することを優先し、ほぼ全財産を母が相続しました。
この結果、一次相続時の相続税は発生せず、申告もスムーズに完了しました。
ところが、数年後に母が亡くなった際の二次相続では、母が保有する財産が大きくなりすぎており、基礎控除額を大幅に超える財産に対して高税率が適用されました。
結果的に、一次相続と二次相続を合わせた相続税負担は、一次相続で子にも財産を分けておけば避けられた水準にまで膨れ上がりました。
失敗の原因:一次相続時に二次相続を考慮せず、目先の節税を優先したこと
この事例の最大の原因は、一次相続時に配偶者控除を最大限活用することにばかり注目し、二次相続での相続税負担を想定した分割を全く考えなかった点にあります。
相続税法第19条の2により、一次相続では「1億6,000万円」または「法定相続分まで」の財産について、配偶者には相続税がかからない特例があります。
しかし、この特例は一次相続のみの措置であり、配偶者が亡くなる際の二次相続では適用されません。
そのため、一次相続で配偶者に財産を集中させると、二次相続時には基礎控除を超える財産に対し高税率が適用されるため、相続税の総額が非常に高額になるという構造になります。
一次相続時に長期的な視点を持たなかったことが、結果として相続税負担の増大につながった典型的な事例です。
対策:一次相続と二次相続をセットで考え、負担を最小限に抑える
以下の対策を一次相続の段階から意識することで、二次相続時の税負担を軽減することが可能です。
一次相続時に子にも財産を分割
配偶者に全財産を集中させず、子や孫にも一定割合を分けることで、配偶者の相続財産を抑えます。
配偶者控除の範囲内に収めつつ、次世代に財産を早期に移すことで、二次相続時の課税対象額を縮小できます。
二次相続を見据えたシミュレーションを実施
一次相続時に、配偶者の生活資金や介護費用などを考慮しつつ、二次相続時の財産総額と相続税額を試算します。
一次相続と二次相続をトータルで比較し、最も税負担を抑えられる分割方法を検討します。
資産の種類ごとに分割を工夫
配偶者には生活に必要な自宅や預貯金を相続させ、収益物件や投資資産は子に承継させるなど、財産の性質に応じて相続人ごとに分ける方法も有効です。
生前贈与を積極活用
一次相続前から子や孫への生前贈与を計画的に実施し、相続財産そのものを圧縮しておくことも重要です。
特に以下の制度を活用すれば、贈与税負担を抑えつつ円滑に資産を移せます。
・毎年110万円まで非課税となる暦年贈与
・教育資金の一括贈与非課税制度
・結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度
遺言書の活用
遺言書を作成し、二次相続まで考慮した分割方針を明確にしておくことで、無用なトラブルを防ぎ、税負担軽減につながります。
まとめ
相続税対策は、一次相続での負担軽減だけを目指すものではありません。
一次相続で配偶者に財産を集中させると、一次相続時の税負担は軽くできますが、その反動として二次相続で非常に重い税負担に直面するリスクが高まります。
家族全体の相続税負担を最小化するためには、一次相続と二次相続を一体で考えた相続対策が必須です。
一次相続の段階から、二次相続のシミュレーションや財産の分散、早期の生前贈与を組み合わせ、長期的な視点で相続税対策を進めることが重要です。